集中力とチャレンジに向き合おうとする決意が問われるポーズ

戦士のポーズⅠ(ヴィーラバッドラーサナⅠ)は、集中力とチャレンジに向き合おうとする決意が問われる、力強い立位のポーズだ。
ポーズの完成形では、複数のことに同時に集中して取り組まなくてはいけない。

また、このポーズでは、体を逆方向に引っ張られるように感じられる、いくつかの動きを一度に行う必要がある。
つまり、床をしっかりと押しながらも体は引き上げ、後ろに伸びながらも前に押さなくてはならないのだ。
次々と戦いに挑んでいくように感じられることもあるが、この基本的なポーズを習得すると、素晴らしい効果が得られる。

まず、太腿の筋肉が鍛えられる。
そして、足と足首が伸ばされて鍛えられ、コアの筋肉が引き締まる。
さらに、腕を頭上に伸ばすことで強化され、胸が開いて肺が広がり、活力がみなぎるのが感じられる。

また、股関節と胸を開き、両手足を鍛えると、さまざまなバックベンドや逆転のポーズを行うための準備にもなる。

このポーズではさまざまな異なった動きをする為、練習の際には毎回ひとつの動きを選び、それに集中しよう。
多くの生徒にとって、もっとも難しいチャレンジの一つが、腰を圧迫せず、胴体を上の方へ伸ばしながら、前に出した足の膝を深く曲げておくことだ。

ここでは、骨盤の位置がカギになる。
もとから、股関節屈筋(太腿の前から骨盤へと走る複数の筋肉。この働きにより、広い歩幅でしっかりと歩くことができる)の柔軟性がとても高くなければ、前に出した足の膝を90度に曲げていく時に、腰が圧迫され、骨盤上部が前傾することが多い。

そうではなく、腸骨稜を引き上げ、骨盤をよりまっすぐ、あるいはニュートラルなポジションに持っていくようにしよう。
腸骨稜は、ウエストを両手で包み込むようにした時に下腹部の両脇で感じられるところにある。
膝を90度に完全に曲げておくよりも、膝を伸ばしながら、骨盤をこの位置に持っていくようにする方が大切だ。

ヨガの共通テーマである精神の探求

ヴィラバドラーサナⅠ(戦士のポーズⅠ)をやって、苦しさに喘いだことのある人なら誰もが、このアーサナが宇宙のカオス、死、破壊などから触発されて生まれたと知ってもさほど驚くことはないだろう。

多くのヨギ、特に初心者は、あまりの複雑さ、つまり伸張と収縮、ひねりと後屈、内向きと外向きの回転、強靭さと柔軟性の絶え間ない対立にすっかり追いつめられたような感情を抱くかもしれない。

しかしその一方で、戦士のポーズの物語は強烈なアイロニーを含んでいる。

「ヨガの理想がアヒムサ(非暴力)であるとするなら、たくさんの人々を殺戮した戦士を賞賛するポーズを練習するのはおかしいのではないかという疑問が生まれます」と言うのはカリフォルニア州のヨガスタジオのディレクター。

その質問に答えるには、インドの神話的な伝承を考察する時の常でポーズの象徴的意味合いを考えなければならない。

「ヨギとは実は自分自身の無知と戦う戦士なのです。
私が推測するには、戦士のポーズⅠは自分自身の限界を超える為のポーズなのです」

サンディエゴのアシュタンガヨガ・センターのディレクターも同意する。

「戦士のポーズは謙虚さを培うポーズです。
長い時間ポーズを保とうとすれば、あなた自身の身体的、感情的、精神的な弱さと向き合うことになるでしょう。
どのような限界があろうとも、ポーズによって明らかにされる限界に真剣に立ち向かうことになるのです。」

このように考えると、戦士のポーズⅠを練習することは、「信念に従って果敢に戦う」ととらえることができるだろう。
このポーズの形は高潔で強靭なシヴァ神の足元から生まれたモンスター戦士、ヴィラバドラの身体的描写であるという。
理解と意志を持ってこのポーズを練習するとそのようになれるのだ。

言い換えれば、このポーズの本質は、ヨガの共通テーマである精神の探求にあるのだ。
他のアーサナ同様にこのポーズにはたくさんのバリエーションがある。
ヨガの流派やクラスによってポーズのディテールは違っても、そのエネルギーの高さは変わりない。

ここでは5つの伝統的流派(アイアンガー、アシュタンガ、アヌサラ、クリパル、ヴィニヨガ)を代表する著名な指導者が、戦士のポーズⅠの理解を深める為に独自の知識や意欲を喚起し、あなたの中に眠る戦士のパワーを目覚めさせてくれるだろう。

戦士のポーズⅠの現代的なバージョン

バリエーションには、スタンスの位置や幅、腕と頭の位置、前足の膝の角度、後ろ足の回転度、腰と肩の関係などが挙げられる。

「前足の太腿が床と平行になるくらい広いスタンスをとれば、足を強化することができます」と彼は説明する。

「もしスタンスを狭くし、腕を床と平行に保ち、肩甲骨をお互いに引き寄せると胸椎後湾(背中上部の過度の湾曲)を矯正するのに役立ちます。前足の上に同じ側の腕を休ませ、胸を上前方に突き出し、もう一方の腕を引き上げることによって、腸腰筋がストレッチされます」

戦士のポーズⅠの現代的なバージョンは、古代インドの武術のスタンスが基本となっているとクラフトソーは説明する。
「戦場にあってもエネルギーを浪費することなく、前進と後退ができます」と彼は言う。

「このポーズはスタンスが広いため、前後へのステップが容易になります。重心は低く、よって体は安定して足は地面にしっかり根付いている。勇気の象徴として胸は開き、視線は戦場のはるか前方をしっかり見据えているのです」

アーサナの大ヒット

アメリカのヴィニヨガ・インスティチュートの創立者であるゲイリー・クラフトソーは、戦士のポーズⅠをアーサナの大ヒットと考えている。
「万人にとって核となる10~15のポーズがあるとすると、これはそのうちのひとつです」と彼は言う。

「足と背中を強化し、背骨を正しい位置に戻し、腰筋をストレッチし、骨盤を開き、股関節を安定させ、呼吸を深めてくれます。自身と勇気をもたらす象徴と見なすこともできます。その意義を理解しているなら、効果はさらに高まるでしょう」

クラフトソーは、このポーズをT・K・V・デシカチャールから学び、デシカチャールは父のクリシュナマチャリアから学んだ。
ヴィニヨガのッ伝統では、アーサナは主に治療的に利用され、一対一で教えられるため、先生は生徒によってポーズを変えていく。

「戦士のポーズⅠには何が正しく、何が正しくないということはありません。実際、このポーズを練習する人の数だけバリエーションはあるのです」とクラフトソーは言う。
「それによって、体の様々な機能的な潜在力を引き出すのです」

ポーズは私たちの感情全てを噴出させる安全な場になる

「このポーズは、強靭さと素直さと、無防備ささえも同時に培います」
とフォールズは説明する。

「これらは、私たちの多くがあまり得意としないことです。私たちは、強いは頑固者で、素直は軟弱者であると思いがちですが、クリパルヨガの目的は、この意志の力と心の解放とのバランスなのです。私たちには、エネルギーを生み出す意志の力と、世界に影響を与える精神の力が必要です。しかしまた、人生におけるチャンスをありのままに見られるように感情に身を委ねることも必要なのです」

このポーズは、湧き上がってくるさまざまな感情、特に人生の豊かな表現を抑制しようとするやっかいな感情を探求するのに最適です、とフォールズは言う。

「戦士のポーズⅠであなたが引き出す強さはまた、怒り、不満、敵意などをもたらすことがあるかもしれません」
「このポーズで私たちはこれらのエネルギーを生み出し、自分たちでそれを完全に感じ取ることができます。私たちは感情や感覚の波に乗ることを学び、それによってポーズは私たちの感情全てを噴出させる安全な場になるのです」

クリパルヨガの戦士のポーズ

数あるアメリカンヨガの流派の中でもメジャーなビクラム、クンダリーニ、クリパルの3つは、クリシュナマチャリア師の流れを汲んではいない。
他の伝統的な流派とポーズ名と神話は共有しているものの、クリパルの戦士のポーズは1950年代にスワミ・クリパル師が練習中に天来の霊感によって授けられたものだという。

「私たちの伝統では、十分に深い瞑想状態に入れば、ハタヨガは完全な形で現れると考えます」とマサチューセッツ州ストックブリッジのクリパルヨガ・センターの上級ヨガ指導者であるリチャード・フォールズは語る。
「それがスワミ・クリパル師に起こったのです。38歳の時、彼の進化的なクンダリーニ・エネルギーが目覚め、彼の体は自然発生的にすべてのポーズを行ったのです」

スワミ・クリパル師がこの世界へ導き入れた戦士のポーズは、ひとつの主要なディテールにおいて異なる。
つまり、後ろ足のかかとが地面から離れているのだ。
しかし、これがもっとも重要なわけではない。

「ポーズは体を開き、自らの存在に目覚める為のツールだと私たちは考えています」とフォールズは言う。
「クリパルヨガで私たちがいつも尋ねる質問は、『このポーズはあなたに何をもたらしますか?』ということです」

答えは、もちろん個人的なもので、一人一人違う。
しかし、概して戦士のポーズⅠはある種の力を導き出す。

女神への讃歌

このポーズでの2番目の原則はマスキュラーエナジーだ。

「いつも真ん中に向かって筋肉を引き締めています。つまり、パワーの源へと締め付けるのです」

これが足のハサミ運動を生み出すことになる。

 

3番目は、内側へのスパイラル。

「後ろ足を内側に向けることによって、大腿骨は後ろへ下がり、腰は広がります。これによって腰の後ろを容易に前方へと回転できます」

 

そして4番目の原則は、外側へのスパイラル。

「外側への螺旋運動は、前足の太ももで強調されることで、両足を引き合わせ、尾骨を前方に引き伸ばします」
「これによって、内側へのスパイラルの働きとバランスをとるのです」

 

最後の原則は、オルガニックエナジーである。

「骨盤のコアにフォーカスして、尾骨と仙骨が出会う地点に光の小さな球を描きます。そこからすべてが外側に広がり、太陽のように輝きます」

このポーズの鍵となるのは最初の原則で、「内面を明るく照らして外面がリラックスできれば、それほど頑張る必要はありません」と結論付ける。

「ポーズはその人の意図すべてを表現しており、それは宇宙の創造力であるシャクティを称えるためかもしれません。結局、ヴィラバドラはひとりの女性の為に仇討ちをしたのです。そのように考えると、このポーズは真に女神への讃歌なのです」

起源となった伝説と不即不離の関係

アヌサラヨガでは、このポーズは起源となった伝説と不即不離の関係にある。
2つを別々にするとそれはヨガではない、とアヌサラヨガの創立者であるジョン・フレンドはいう。

「私は講演で何人かの男たちが腕を頭上に上げてランジのポーズをとっているのを見ましたが、彼らはただお尻を鍛えているだけでした。
戦士のポーズⅠをする時、あなたはお尻や足を鍛えるだけでなく、体を通して意気揚々と自分の気持ちを表現しているのです。
私は、気持ちが内側から外側へ出てくるように、生徒たちにポーズの背景を理解して欲しいです。」

フレンドはこのポーズにおける5つの主要なアクションを挙げる。
そしてそれぞれが、アヌサラヨガが提唱するアラインメントの5つの普遍的原則に対応している。

「最初は、神の愛への目覚めです。これは、神の存在を常に意識することです」
「ヴィラバドラは神から生まれたが故に強いのです。このことを忘れなければ、体の内側は光り輝き、体の外側はこの内面の光を優美にまとうのです」

グランティとは

グランティとは、人体の中を流れる気をブロックするエネルギーの結び目である、とミラーは説明する。
からまるように感じる場所と考えてもいい。

グランティには3つのタイプがあります。ブラーマ・グランティは仙骨に司令塔を置く肉体の結び目、ヴィシュヌ・グランティは心臓に位置する感情の結び目、シヴァ・グランティは第3の目とつながっている精神の結び目です。

アシュタンガ流で練習していると、戦士のポーズⅠは3つすべてのグランティに同時に作用して、肉体、心、精神のもつれやからまりを解くのを助ける。

ポーズの肉体的な摂理はブラーマ・グランティに、呼吸への集中は胸部にある感情の結び目に、ドリシティという視線の焦点は意識に集中することによって精神の結び目にそれぞれ働きかける。
「このポーズは、すべてのエネルギーレベルに働きかける、ひとまとめのパッケージなのです」とミラーは言う。

フローこそアシュタンガヨガの真髄

戦士のポーズⅠは、アシュタンガヨガの太陽礼拝Bシリーズを特徴づけるものだろう。
「太陽礼拝Bでは戦士のポーズⅠを左右両サイドで交互に何度か繰り返します。体が温まってくるとより深くポーズに入れます」とティム・ミラーは説明する。
「またすばやく行われる為、ポーズの生体力学を考える暇さえありません。フローの中で行うことがもっとも重要なのです」

フローこそアシュタンガヨガの真髄である。
「フローによって意識を集中できるのです」とミラーは語る。
「それはより右脳的なアプローチです。すべてを理解しようということではありません。正しい方法はひとつだけではないのです。だからといって、いい加減にやっていいということではありません」

ポーズ自体はおなじみのものだ。
前足を90度に曲げて、後ろ足はまっすぐに伸ばし、足の外側を押し付け、腰はまっすぐ正面を向き、両腕は頭上へ伸ばす。しかし、ひとつだけ重要な違いがある。アシュタンガヨガでは、T・クリシュナマチャリア師のもうひとりの生徒だったスリ・K・パタビ・ジョイス師が教えるように、前足の膝がつま先に沿って足首より前に伸びているのだ。

これがこのポーズの最終目標であるが、すべての生徒にとって安全もしくは実践可能というわけではない、とミラーは指摘する。
ミラーによると、この練習によって肉体の限界を超える効果があるという。
「前足がより深く入っていくと、仙骨の周辺部位へと深く入り込み、グランティにアクセスできるのです」と言う。